昭和11年(1936年)J.O発声漫画による制作『オモチャ箱 シリーズ第3話 絵本1936年』なる動画作品である。
見終わって暗澹たる気持ちに陥ったのは筆者だけではあるまい。
まず、作品の質において甚だ水準低し。企画、構成、キャラクターデザイン、アニメーション技術、声優に至るまで、作品それ自体としては見るべきものなしと判ぜられる。
しかしながらこれを8年後公開の昭和19年(1944年)『桃太郎 海の神兵』に至る時系列において見るなれば、資料価値としてかくも得難き資料も比類なきものと得心せるものである。
いささか怪しい戦前調の文体を改め、以下は普通に書くことにします。
南の島、これは『桃太郎 海の神兵』においても重要な舞台として使用された日本軍の占領地です。その地において、現地住民を意味する動物たちなどに、「日本文化」をもって歌や踊りを楽しむ風景が、さも当然のこととして展開します。
ここにこそ、私たち民族ならぬ私たち日本人がかつて到達した国家主義的思想に基づく疑いなき善意と、他民族・他文化にとっていささか迷惑な人道主義を垣間見ることができるわけです。
国家主義、軍国主義という思想は、私たち日本人の生活や経験とは無縁のものであることに注意しなければなりません。さらに言えば、あらゆる「思想」が、人心を生活道徳から乖離させる元凶となりうる危険なものであることにも認識をおくべきところでしょう。
かつて私たちの父たちや祖父たちは、その認識を持たなかったというのが事実であろうと考えるところです。そのような無意識、そのような人道主義によって、「思想」を尊きものと信じて疑わぬ少年たちを育成してきたことは、大日本帝国最大の過ちであったと見ることに異論はないはずです。
「大日本帝国」とは即ち、上記のように、私たちの素朴な心に、その生活とは無縁の価値観や慢心をもたらすための人工国家だったのです。
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